回帰する心地よさ
ほんとうは夏も良いんだけど、やっぱり冬になると「ウールはいいぞ」って話になる。あったかい、って一口に言うけど、実はそれだけじゃないんだなあ。なんでわざわざ、便利で手軽な化繊ウェアもあるのにウールを選ぶのか、そこなんだ。
SDGsが浸透するもっと前から、自然に遊ぶアウトドアズマンは環境に対する姿勢もマジメなもので、化繊ウェアの便利さを充分理解しつつ、環境負荷の少ない自然素材のよさも研究してきた。その代表格がウールで、よりアウトドアでの使用に耐えうる、快適性の高い素材ということでメリノウールのウェアや靴下を愛用する人はどんどん増えてきたように思う。
何と言っても保温性が高い。冬場はこれだけで着たくなる。一方で通気性も高い。だからムレ知らずだし、いつも肌表面は気持ちいい。よく考えたら、真夏は35度を超え、真冬はマイナス20度を下回る過酷なニュージーランドの自然に暮らす、メリノ種の羊たちの身体を守っている「ウール」なんだ。そりゃあ、いろんなシーンで快適なハズだ。
あとは臭いにくい、熱に強い、紫外線に強い、最後は自然に帰る、そういった良い点はいっぱいある。しかし一番気に入っているのは、着心地が抜群に良いということだ。ウールといえば、一昔前のウールのセーターが思い起こされるが、フリースに取って代わられる以前の分厚くて重い、チクチクするアレとはもう、時代が違う。
アイスブレーカーが使う、ニュージーランドの高所に住んでいるメリノ種ウールは、とっても繊細な17~19ミクロンという細さのスーパーマイクロファイバー。通常、メリノ種からとれるウールはおおむね23ミクロン以下と、人毛の1/3程度でどれもかなり細やかだが、人間が「チクチクする」と感じ始めるのは19ミクロンくらいから。アイスブレーカーは、かなり贅沢に超細手のウール繊維を選抜して使い、あのしなやかな着心地を実現していることになる。
世の中には、メリノウールを謳いながらも、ちょっと太くてまだチクチクするウールを、化学処理で細く加工してしまうなんて事例もあるらしい。確かにメリノかもしれないけれど、科学の力を借りてまで、さらに本来の機能を失う加工をするなんて、まったく意味がないんじゃないだろうか。
人間はワガママなので、着心地みたいなカラダ直結のリアルなことには、リアルに反応する。素材の回帰、なんて大げさに考えなくても、たぶん肌は本当のことを分かっていて、アイスブレーカーのメリノウールを選ぶだろう。本能で、本当の素材に回帰していっちゃうんだろうなあと思うのだ。